認知症
認知症とは
認知症は、脳の病気や内因性疾患などさまざまな原因により、脳の認知機能が低下し、物事を記憶したり判断したりする能力、時間や場所・人などを認識する能力が下がるため、日常生活に支障が出てくる状態をいいます。
老化による物忘れと違い、何かの病気で起こる症状や状態の総称です。
認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。
認知症の症状
認知症の初期症状は種類により異なりますが、多くの場合、自覚症状がなく、他人からの「もの忘れ」の指摘から気づかれます。
「もの忘れ」には、単なる老化による場合と認知症の初期段階の場合とがあります。ものごとの「理解や判断速度の低下」や「集中力・作業能力の低下」も始まるため、日常的な家事や趣味などにも変化が表れます。
- しまい忘れや置き忘れが多くなった
- 何度も同じことを言ったり、聞いたりする
- ご飯を食べたことを忘れている
- 薬を飲み忘れるようになった
- 時間や場所の感覚が不確かになってきた
- 慣れている場所なのに、道に迷った
- 人の顔を覚えられなくなった
- 掃除できなくなった
など。その他以下のようなことも挙げられます。
性格や行動の変化
「無気力になった」「落ち込みがちになった」「怒りっぽくなった」「こだわりが強くなった」「寝れなくなった」など
幻覚、幻聴
「模様を人や虫などに見間違える」「家の中に小さな子どもが見える」など
妄想
「家の中に誰かがいる」「財布を盗まれる」「妻が浮気している」など
これらの症状については認知症の周辺症状のページをご覧ください。
認知症の原因
認知症は単一の疾患ではなく、さまざまな種類が知られています。認知症のうち60~70%はアルツハイマー型認知症で、約20%は脳血管型認知症と言われており、認知症の約9割をこの2大疾患が占めています。中高年の方が症状を呈した場合、最も多いのがこの2大疾患です。
アルツハイマー型認知症
特殊なたんぱく質が脳に沈着し、脳細胞が破壊されて減ってしまうために、脳の神経が情報をうまく伝えられなくなり、機能異常を起こすとされています。また、脳細胞が死んでしまうことによって脳が萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能も徐々に失われていきます。
アルツハイマー型は認知症の中でも一番多いタイプで、男性よりも女性に多く見られます。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、大脳白質病変など、脳血管性の疾患によって、脳の血管が詰まったり出血したりして脳細胞に酸素、栄養が行き届かなくなり、脳細胞が死んでしまうことにより認知機能が低下します。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる神経細胞にできる特殊なたんぱく質が大脳皮質や脳幹に多く集まる病気です。レビー小体が多く集まると、情報の伝達がうまくいかず認知機能が低下します。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉が萎縮することによって起こる認知症です。若い方にも、発症が見受けられます。
認知機能障害は認知症以外でも起こり得ます。感染症などによるせん妄、甲状腺機能低下症(橋本病)などの血液検査を行わないと診断できない病気や、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、クロイツフェルト・ヤコブ病などCT検査、MRI検査など頭部画像検査を実施しないと診断できない病気があります。また、うつ、統合失調症、アルコール依存症などの精神疾患によって起こる場合もあります。
正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫
上記の病気ほど多くはありませんが、認知症をきたす病気の中には、「正常圧水頭症」や「慢性硬膜下血腫」など脳外科的手術で症状の改善が期待できる病気もあります。これらの病気は脳の画像検査(CT検査、MRI検査)で診断できますので、手術が必要な場合には脳外科医を紹介いたします。
甲状腺機能低下症(橋本病)
内科疾患が原因で知的機能が低下する「甲状腺機能低下症」の場合もあります。この病気では甲状腺ホルモン製剤を補充することにより、認知症症状は改善します。
認知症の診断基準
記憶や認知機能の程度を調べる検査や、脳の状態を視る画像検査などを行い総合的に診断します。
認知機能検査
曜日や時間、物の形の認識、簡単な計算、数分前に見た物の記憶などを調べる検査です。
画像検査
CT検査やMRI検査などで脳の萎縮、梗塞や出血の有無などを確認する検査です。
また、他の病気が原因の場合と鑑別するため、血液検査や心電図検査などの一般的な身体検査や、運動機能や神経学的検査を行うこともあります。
認知症の治療法
主な治療方法は、非薬物療法と薬物療法があります。
非薬物療法
薬物を使わずに脳を活性化し、残存している認知機能や生活能力を高める治療法です。
家庭内で本人の役割をつくって(洗濯物をたたむ、食器を片づけるなど)、前向きに日常生活を送ってもらうことが治療になります。
また、過去の思い出を想起する(回想法)、音読や書き取り、計算をする(認知リハビリテーション)、音楽鑑賞、楽器の演奏(音楽療法)、植物を育てる(園芸療法)、有酸素運動を行う(運動療法)、動物と触れ合う(ペット療法)などの治療があります。
薬物療法
認知機能を改善して中核症状(記憶障害や見当識障害など)を改善し、病気の進行を遅らせる治療と、周辺症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える治療があります。
脳血管型認知症では多くのケースで脳梗塞の再発を予防する薬が用いられます。脳血管障害の再発によって悪化していくことが多いため「再発予防」が大事です。脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などをきちんとコントロールすることが再発予防につながります。
早い時期に薬物投与を始めると、より改善効果の高いことが知られていますので、早期発見と早期治療が重要です。
当院での在宅医療でのサポート
進行する認知症状は完全な治癒は困難ですが、適切な薬物療法、非薬物療法によって軽減を目指します。
ケアマネージャーや訪問看護師と協力して在宅での生活をサポートします。